殺戮にいたる病/我孫子武丸

読みました。現在、激しく落ち込んでいます。この作品を単なるサイコ・ホラーと思って読んでしまったことについて。もう結末を知らない状態では読み返せません。ああなんて勿体無いことを。

本作は「殺人犯」「我が子が殺人犯ではないかと疑う母親」「知り合いを殺され、その妹と一緒に犯人を探す元刑事」の三つの視点から交互に描かれます。
序盤からまず圧倒される、この「母親」のおぞましさ。我が子の部屋に入り、抽斗はおろかゴミ箱まで漁る母親。ホラーです。私は殺人犯当人よりよほど怖いと思った。無理。この人と一緒に暮らすのは無理。
しかしまあ、世の中で見かける育児論もなぜああ「性欲」に偏って過剰なのでしょうね。性欲って、特筆するほど大袈裟なもんじゃないと思うんですけど。

作中でゲインたん(私の好きな性的倒錯者の一人、墓を荒らして母に似た女性を探していた孤独な子)に触れられていたのでちょっとテンションが上りました。エド・ゲインとジェフリー・ダーマーは好きです。
たぶん作者も念頭に置いたと思うんですが、このエド・ゲインという人、毒母育ちなのですよね。性はいけないもの、女は汚らわしいもの、我が子に父の死を願わせ、子の交友関係を制限し、我が子を絶対的な支配のもとに置いた人。
作中で殺人犯が女性から切り取り持ち帰った膣でマスターベーションしているとき、私はこのエド・ゲインという人を思い出しました。彼の方はマスターベーションしていたかどうかまで書かれてませんけど、切り取った膣で自らの男性器を包み〜っていうのは似通った行動ですね。

元警察官の方については特筆すべきことがあまりない。ちょいちょい迂闊なだけの普通の人。
作中で一番好きだったのは竹田教授です。

以下、あまりにも悔しいのでせめて同人小説家として少しでもこの作品を吸収するために作品内に張り巡らされたミスリードを挙げます。
ばりばりのネタバレですので未読の方は読まないでください。オチを知ってから読むなんて最低なので、興味がおありならば是非、是非何も知らずこの本を読んでいただきたい。

“殺戮にいたる病/我孫子武丸” の続きを読む

日記 2017年9月1日

職場の強すぎる冷房にこれでもかと自律神経をいてこまされているうちに夏が過ぎ、気がつけば空は一足先に秋の様相。何より一足先にかというと私の気持ちより一足先に。

今年は梅雨前線と秋雨前線がいっぺんに来たような雨ばかりの夏とも言えない夏で、まあコメ農家はさぞ困ったろうと思う。

社会というのは常に冷房か暖房かを焚いていなくては死んでしまう生き物なのか、冷夏だというのに職場の冷房はフル稼働で、冷房に一番近い席を賜ってしまったばっかりにニットベストとマフラーを装備してガタガタ震え温かいお茶を常に飲みながらお仕事した夏でした。

日記 2017年5月9日

見てと言われて窓に目を向けるとその向こうに母が倒れていた。母は飛び降りたのだ。私たちがそう仕向けたから。祖母と父は笑っていた。母の死体を見て、笑っていた。

部屋には私の知り合いが集まっていた。私はそれを殺す。片っ端から、全員、殺す。武器は覚えていない。銃の手応えもナイフの手応えも記憶にない。どうしたのかはわからない。でも全員殺した。

窓の桟に腰掛けてカーテンにくるまる。罪悪感と安堵と開放感が押し寄せてくる。

「私は悪いことをした」

私はつぶやく。

「でもあの人達だって私に悪いことをしていた」

カーテンに顔を押し付けて息をつき、部屋を出る。部屋の外には車が停まっている。私はその後部座席に乗り込む。

知らない男女がその後から乗ってくる。女性の方は後部座席より後ろのトランクに乗り込む(バンとかワゴンみたいにトランクの広い車だった)。男性は痩せぎすの、青白い、目の周りを不吉な色に染めた人で、私の隣りに座って古いiPhoneをいじる。

その男性と運転手がねえこれ壊れたんだけど、直る、とか、ルート取ってんの、とか話していると、更に別の人が車に乗り込もうとする。男性は私をちらりと見る。私は自分の隣を手のひらで叩いて示す。男性が私の方に詰めて座る。

手を差し出されたのでその手を握る。窓の外に私の名前の看板が見える。ああもう誰もあの名前を知っている人はいない、もう二度とあの名前を名乗らなくていいのだと思うと泣きそうなほど安心した。


というような夢を見て今朝は四時に目を覚ました。あまりにろくでもない朝だった。自殺する夢は何度か見たことがあるけど皆殺しは初めてだ。

日記 2017年4月24日

ストレスがたまっている。

仕事について、私はもともととやかく言う方ではない。とやかく思うことはたくさんあるけれど(不合理な設計とかスケジュールとか)、基本、言わない。
大抵の場合、私は楽しく仕事をしている。好きなことを仕事にしているからだ。極端な話、プログラムさえ書かせてもらえれば大概のことは無視できる。作業場所が1Kのアパートで、トイレがユニットバスでも。ナプキンを捨てるゴミ箱が無くていちいち持って帰るはめになっても。男性ばかりの業界にいるからか、こういうことはままある。

ただ、プログラムが書けないならば話は別だ。今行っている会社のパソコンは遅い。プログラムを十全に記述するためのスペックがない。IDEと仕様書とメーラーとチケット管理と動作確認を同時に行うことができない。それどころか、IDEしか立ち上げていなくてもIDE自身の便利機能の重さでフリーズする。
ソースの予測とかJavadocの表示とかしなくていいから動いてくれ、書かせてくれと何度も思う。書いたソースの動作確認をしたいのにデプロイに10分も20分もかかる。WBS上の予定時間は15分しか無いにも関わらずだ。

進捗が遅れていますけど、どうしますか、と私の直属が聞きに来る。どうもなにも、無理だ。動かないパソコンを前にどうも何もない。

プロジェクトのメンバーは20人を超える。その全員を集めて一時間も進捗会議をする。その進捗会議のために3人日を毎週捨てている。ばかなのかと思う。
WBSに対して進捗が遅れている対策として彼らは時間外業務や休日出勤を平然と上げる。それは対策ではないと私は思う。コスト意識というものがいっさい、無い。
作業員を仮に20人とする。彼らの基本給を時給換算で仮に1000円とする。この進捗会議だけで二万円が飛んでいる。私が入ってから三週間になる。六万円。もちろん時給換算1000円なんてばかなことはない。私の手元に入るのだってそれくらいなのだから、偉い人はもっともらっているのだし、そもそも外注しているのだからもっともっとかかっている。ほぼ末端の私にだって倍以上はかかっているはずだ。どう考えても、マシなパソコンを買って残業を減らしていく方がいい。
尤も、一会社員にそのコストを鑑みる義務や責任はない。

派遣先を擁護するつもりはないが、これは貧困のひとつのモデルだ。
パソコンを買うには金がいる。だがその金は仕事をしないと手に入らない。だから古いパソコンでひたすら時間をかけて仕事をする。先行投資というものをする余力がないんだろう。

誰も悪くないのだと思う。あるいはそう思いたいだけかもしれない。

日記 2017年1月14日

コーヒーメーカーを買い替えた。

本当はガラス瓶部分だけを替えればいいはずだったのだけどコーヒーメーカーのコーナーでカルディとかジュピターで配っているような小さいカップにコーヒーを配っていた背の低い眼鏡の明らかにキャンペーン向きの人員ではなさそうなキャンペーン担当が「全部買い換える方が安い」と言うのでそうした。部品よりその部品を含む全体の方が安いというのはどういう原理なんだろう。まったくもってエコではない。

昨日の私はそれなりに多くの雑務を抱えていて、たとえば連絡の入った通販の対応だとか友人に送ろうと思っていた荷物だとかそういうものの伝票を書いたり封筒を印刷したりというこまごましたタスクがあって、仕事の方はその前日にはおおよそ落ち着いていたからできるだろうと計算していたのに昨日の定時近くになって急にタスクを積み上げられて結局二十一時過ぎまでたっぷり三時間半も予定が狂ってしまった。眠くてたまらないからと言って二十時すぎに飲んだコーヒーのせいで寝るにも寝られず、かといって起きていられない程度には眠く、布団に入って一時間ほど生殺しの目に遭ったりもした。

二十一時過ぎまで働いた金曜の夜にじゃあ酒でも飲むかとコップを取り、その反動で干していたコーヒーメーカーのガラス瓶を取り落とした。ガラス瓶は私の足元に落ちて、割れた。その瞬間に襲ってきた虚無やら疲労やらどこに向けていいかもわからない怒りだとかそういうものに任せて棚の皿をすべて三和土に叩きつけてやっても良かったのだが(ダジャレではない)それをやったら片付けが面倒臭すぎてそれこそ首を括りそうだったのでやめた。面倒くさいは私を殺す。

コーヒーはもう諦めようかとも思ったのだけど朝起きてみたらやっぱりコーヒーのない生活は悪いと思ったのでおとなしくガラス瓶を買い換えることにして、冒頭に戻る。店員は電気屋の店員というものがとても良く似合う、悪く言えば埃っぽいような、パソコンのファンが吐き出すあの空気が似合うような女性で、笑顔が可愛かった。彼女の爆笑を見てみたいとも思ったのだけど、きっともう会うこともないんだろう。

[第二十三回文学フリマ東京新刊] 我ら北高推理研究愛好会(非公認)!

眉目秀麗成績優秀、ついでに家が金持ち。順風満帆が服を着て歩いているような学内の有名人、五十嵐興毅が行方不明になった。
失踪か誘拐か、はたまた殺人か――錯綜する情報の中、ゲコ、イーグル、トロの三人からなる北高推理研究愛好会(※非公認)は事件を解明すべく捜査に乗り出す!ポップでダークな異色ミステリー!

自分でアオリ文章を考えるのはSAN値が削れますね。

今回はいろんなものを詰められるだけ詰めました(詰められないものは諦めました)。
ヴァン・ダインには助走をつけて殴られそうです。
疑うことが楽しい作品になりましたので、どうぞ思う存分疑ってください。

500円で刷れるページ数を超えてしまったので600円です。よろしくお願いします。

「現実は物語じゃない」

[第一回文学フリマ岩手新刊] 7ビットの心音

「これはね、ヒト。この建物は、大きなヒトなの」

2013年のフォロワーさんの #RTしてくれたフォロワーさんを自分の世界観でキャラ化する 企画で作ってもらったキャラクターを主軸にローファンタジーを書きました。

表紙は同じく日魚ときお(@tokyosanfish)さん。
表紙、挿絵、ポスターまで書いていただいて感謝感謝。

在庫残ってるので11月23日の第二十三回文学フリマ東京にも持っていきます。500円。
通販ものんびり対応中。一冊なら送料込み640円での対応になります。

7ビットの心音_表紙イメージ